高齢者の食事の問題と食事介助の注意点

介護業務で食事介助に従事している方に理解してほしいのが、加齢の影響で起きてくる身体や感覚の変化についてです。

変化として、まず噛む力(咀嚼力)の低下が挙げられます。これは歯を失ってしまったり、顎の力が弱まることが原因とされており、食べ物の硬さと大きさを調整することが必要となります。

また、飲み込む力(嚥下力)の弱まりも出てきます。これを嚥下障害と言い、喉や気管、食道などの筋力や神経が加齢によって衰えることが原因だと言われています。窒息を起こしたり、誤嚥性肺炎を起こしたり、脱水症状を起こしたりなどといったことを防ぐためにも、正しい姿勢を確保して食事を食べてもらうことが大切です。

そして、味覚や嗅覚の衰えもあります。これにより、食欲が減ってしまう人もいます。舌にある味蕾という細胞が減少することにより、味の濃さが分かりにくくなり、食材の香りを感じられなくなるのです。少しでも食欲を促進するために、少しでも食事に興味を持ってもらうような工夫をすることが重要になってきます。

最後に挙げられるのは、胃腸の消化機能の低下です。その結果、胃もたれが起こりやすく、お腹を壊しやすくなったり、便秘になりやすくなります。そのため、なるべく消化吸収にやさしい食事を適量用意しましょう。

このようなことが原因で食欲が沸かなくなり、栄養不足に陥るケースは少なくありません。そんな事態を防ぐためには、食事前に誤嚥を防ぐための正しい姿勢を確保し、こまめに声掛けをし、さらに盛り付けで食事を美味しそうに見せて、楽しんでもらえるよう心がけることが求められます。そして食事中は、利用者のペースに合わせて適量をバランスよく口に運ぶようにしましょう。決して急かしたりしないことが大事です。

高齢者にとって食事は、身体の栄養になるだけでなく、生きがいにもなるとても大切なイベントです。実際、「食事の時間が一番の楽しみ」という利用者も少なくありません。利用者の方々の健康と生きがいをつくるという意味でも、食事介助の基礎的な知識はしっかり身に付けておいた方が良いでしょう。